ピアノの正式名称をご存知でしょうか?
ピアノの歴史が関係しており、とても長い名称です。
雑学のひとつとして知っておけば、ちょっとした会話の材料にもなりますよ♪
今回は、そんなピアノの正式名称と誕生の歴史、ピアノと深く関わりのあるチェンバロの特徴について解説します。
ピアノの知識をより深めたい方は、ぜひご覧ください。
ピアノの正式名称は?
ピアノの正式名称は、「グラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」というイタリア語です。
イタリア語で「強い音と弱い音があるチェンバロ」という意味です。
正式名称が略されて、「ピアノ(piano・イタリア語では「弱い音」という意味)」と呼ばれるようになりました。
正式名称の冒頭に含まれるチェンバロ(ピアノの前身にあたる楽器)は、もともとは強弱をつけにくい楽器でした。
1709年にイタリアの楽器製作者のバルトロメオ・クリストフォリが、「チェンバロにも音の強弱をつけてみたい」と考えて、内部にあるハンマーで弦を打つことによって音を鳴らすメカニズムを発明しました。
それが現在のピアノの構造につながっています。
ハンマーで音を鳴らす特徴があることにより、「ピアノは鍵盤楽器であり打楽器でもある」とする見方もあります。
こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ピアノの正式名称はチェンバロから来ている!両者の特徴は?
ピアノの正式名称は昔のチェンバロに由来していますが、両者にはそれぞれに違いがあります。
どちらも同じ鍵盤楽器でありながらも、音の出し方や鍵盤の種類など、異なる点はさまざまです。
こちらの章では、ピアノとチェンバロの主な違いについて解説します。
ピアノとチェンバロは音の出し方が違う
ピアノとチェンバロの音の出し方には、下記のような違いがあります。
・ピアノ
ハンマーと呼ばれる部品が弦をはじいて空気振動で音を出す
・チェンバロ
鍵盤を軽くタッチして、弦をはじく形で音を出す(ギターや琴のような弦楽器と似た音の出し方)
チェンバロは、有名音楽家のバッハやヴィヴァルディが活躍したバロック時代(1600~1750年頃)によく使われていました。
クリストフォリが現在のピアノの原型を生み出したのが1700年頃と言われるため、バッハの活躍していた時代にはピアノはありませんでした。
つまり、バッハはチェンバロを使って演奏していたのです。
同じ演奏家の方が奏でるバッハの曲でも、ピアノとチェンバロでは曲の雰囲気が違って聴こえるので、ぜひ聴き比べをしてみてください。
<演奏曲:シンフォニア 第14番 BWV 800(作曲:バッハ)> ※演奏者はピアニストの難波大(なんば まさる)さん
・チェンバロVer.
引用:YouTube
・現代ピアノVer.
引用:YouTube
ピアノよりチェンバロは鍵盤の種類が多種多様
ピアノとチェンバロは、鍵盤にも違いがあります。
主な違いは下記の通りです。
【ピアノ】
- 鍵盤数は88鍵と決まっている。
- 鍵盤の色は白黒で一段のみ。
【チェンバロ】
- おもに一段鍵盤、二段鍵盤のタイプがある。
- 鍵盤の色は白(または明るい茶色)。シャープのキー(大きい方の鍵盤)は黒。
- ピアノの鍵盤よりも奥行きが短め。
チェンバロは、音の出し方が琴やギターなどの弦楽器に近いため「撥弦(はつげん)楽器」と言われます。
力加減で音の強弱を出しやすいアノと違い、チェンバロは構造的に強弱がつけられないため、鍵盤の数を多くして音域を広くしています。
そもそもピアノはどのように誕生したの?
現代のピアノのメカニズムが発明されたのは17世紀ですが、その原点とされている楽器はさらに前の時代からあったといわれます。
形こそ違いますが、弦で音を出す楽器は昔から多くの人々に親しまれてきました。
この章では、ピアノの誕生と変化の歴史について解説します。
ハンマー・ダルシマーが祖先といわれている
ピアノの原点とされる楽器は、中東の楽器であるハンマー・ダルシマーといわれています。
中東・インド周辺の国々では、約5000年以上前からダルシマーのような弦楽器が親しまれてきました。
ダルシマーは、11世紀あたりに中東からヨーロッパに伝わり、それから存在が広く知られるようになりました。
引用:YouTube
ダルシマーの音色はとても繊細で、音色は和楽器の琴に近い雰囲気です。
その音色の美しさから、ダルシマーは現在も世界中で演奏されています。
「ハンマーで弦をたたいて音を出す(打楽器的な特徴)」と「弦を響かせて音を出す(弦楽器的な特徴)」という2つの特徴から、ダルシマーはピアノの原点となったと言われています。
14~15世紀頃にかけて徐々にピアノの形に
13世紀頃、鍵盤楽器・クラヴィコードが開発されました。
クラヴィコードはルネサンス期に盛んに演奏された楽器で、見た目と音を発生させる仕組み(鍵盤を押すと奥の真鍮製タンジェントが弦を突き出して音を出す)が現代のピアノと似ています。
音の強弱をつけやすい点も、クラヴィコードとピアノの共通点です。
そして1500年頃、イタリアでチェンバロが開発されました。
当時のチェンバロは現代のピアノと音の出し方は異なりますが、クラヴィコードよりさらにピアノに近い鍵盤楽器でした。
特に弦や響板の構造と全体の形がグランドピアノによく似ています。
16世紀以降、世間でチェンバロの即興演奏が流行し、バッハのような歴史的音楽家たちの演奏が盛んとなりました。
こうして、中世音楽の一時代が築き上げられました。
イタリアの楽器製作家・クリストフォリが完成させる
最初のお話に戻りますが、17世紀にクリストフォリがチェンバロに音の強弱を付けることを考えて発明したのが、現代のピアノの祖先である「グラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」です。
初めは「フォルテピアノ」と少し短めの略称で呼ばれていましたが、時が経つにつれて「ピアノ」と簡略化して呼ばれるようになりました。
18~19世紀以降、ピアノはさらに改良が続けられていきます。
ハイドン・モーツアルト・ベートーヴェンなどの名だたる音楽家たちが、進化したピアノの恩恵を受けて名曲の数々を生み出しました。
音域・音量の拡大のために頑丈な弦や演奏できるペダルを設置したり、本体の強化をしたりするなど、さまざまな進化をしてきて現在のピアノの姿に至ります。
20世紀になってからも、技術の進歩によって電子ピアノが誕生し、世界各国でピアノ文化はますます発展を続けています。
これからのピアノの進化にも期待しましょう!
ピアノの奥深い歴史を知って演奏を楽しもう!
今回は、ピアノの正式な名称やピアノ誕生の歴史を中心に解説してきました。
最後に、今回の記事をまとめました。
・ピアノの正式名称は「グラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」(イタリア語で「強い音と弱い音があるチェンバロ」という意味)です。
・17世紀にクリストフォリによって発明され、現代のピアノの基礎にもなっています。
・チェンバロは音の強弱がつけられないので、鍵盤の数を多くして幅広い音域のを奏でる仕組みになっています。
・ピアノの原点は、11世紀頃にヨーロッパに伝わった中近東の弦楽器・ダルシマーと言われれています。
・14~15世紀頃、クラヴィコードやチェンバロといったピアノの原型ともなる楽器が盛んに演奏されていました。
・「グラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」の開発以降、歴史の中で改良が続けられて、現代のピアノの誕生に至りました。
・技術の進歩によって、電子ピアノも誕生しました。これからも、進化はさらに進むでしょう。
ピアノの正式名称や生い立ちを知り、知識を深めてさらにピアノ演奏を楽しんでみてはいかがでしょうか?
ピアノ誕生の歴史や生い立ちについてより深堀したい方は、こちらの記事もご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。