スポーツや音楽・芸術、研究の世界でよく耳にする「ゾーン」とか「フロー」という言葉。
物事に非常に集中している・没頭している状態のことを指します。
私はこれを、ドラゴンボールのスーパーサイヤ人のような状態だとイメージしています。
想像を超える鍛錬の結果、選ばれた人だけが経験でき、無意識に体が動き、かつ無敵のパワーを発揮できるといった感じでしょうか。
有名ピアニストのリサイタルに行くと、「あぁ~、すごく気持ちよさそうに演奏しているなぁ~。今、周りのことは全く目に入ってないんだろうな。」と感じることがあります。
あれは完全に自分の世界に入り込んでいる状態ですよね。
それでいて聴衆を惹きつける演奏ができるのですから、本当に羨ましいです。
そんな状態になれるのは特別な人であり、私には無理だと感じていました。
しかし、よくよく調べてみると実はそこに近づける方法があることが分かりました!
「ゾーン」と「フロー」には違いがあって、「フロー」であればもしかしたら私にも経験できるかも!と希望が持てたのです。
そこで今回は、この気持ちをぜひ読者様と共有したいと思い、以下のことについてご紹介します!
- 「ゾーン」と「フロー」の違いについて
- 「ゾーン」と「フロー」は一流ピアニストにしか経験できないのか
- ピアノ演奏時の心の持ち方とルーティーン
大人になった今だからこそ、ピアノの演奏技術だけではなく、精神的な世界も追及してみませんか?
ピアノ演奏でゾーンやフローを経験するために必要なこと
「ゾーン」と「フロー」は同義的に語られることが多いようですが、厳密にいうと異なる解釈ができると思っています。
両者にはどんな違いがあって、私たちのピアノの演奏にはどのように取り入れていけばいいのでしょうか。
ゾーンとフローはどう違うの?それは一流ピアニストだけのもの?
結論からいうと、私は次のように解釈しています。
- フロー:自分自身で意識的につくり出せるもの
- ゾーン:フローのさらに先にあって、無意識的に入り込んでいくもの
また、それぞれは次のような状態にあります。
- フロー: 緊張とリラックスのバランスがとれた集中状態
- ゾーン: 極限の超集中状態
元レスリング金メダリストの吉田沙保里さんも、「ゾーンは入ろうと意識したらダメだ」という趣旨の発言を現役時代にされていました。
つまり、連続した「フロー」が「ゾーン」を生み出すのです。
このことから、「ゾーン」はともかく、「フロー」は決して一流ピアニストだけのものではないということが分かります。
さぁ、私にも希望が湧いてきました!
あなたも作り出せる「フロー」の状態
ここからは「フロー」について少し掘り下げていきましょう。
この概念はアメリカの心理学者、M.チクセントミハイが提唱しました。
M.チクセントミハイはポジティブ心理学の第一人者で、「楽しみ」や「幸せ」の研究を行っています。
彼は様々な職業の人やその道の成功者へのインタビューをとおして、「フロー」に入るための7つの条件を定義しています。
- 時間の経過とともに、自分が何をしたいか分かっている
- フィードバックが得られる
- 自分が何をする必要があるか分かっている
- それ(活動)が、難しくても可能なことである
- 時間の感覚が消失する
- 自分自身のことを忘れてしまう
- 自分はもっと大きな何かの一部であると感じる
私はこれをもとに、「ピアノ演奏でフローに入る5つの条件」を考えてみました。
- 頑張ったら手が届くぐらいの難易度の曲にチャレンジする
- 曲の時代背景、情景、作者の心情などに思いを馳せる
- 誰かの(何かの)ために演奏するという使命感をもつ
- ただし、義務感ではなく能動的に楽しく演奏する
- 演奏を披露する機会をつくる
M.チクセントミハイは「フローの入り口は誰にでもあり、チャレンジが平均より困難でスキルも平均以上のものが求められている時、そして自分が本当に望むことを行っている時にそこに存在する」と言っています。
適度な困難にチャレンジし、それをクリアしていくことが心から楽しいと思えることが重要なんですね。
私たち大人は何かをしようとする時、純粋に楽しんでやるというよりは義務感に囚われることが多いと思います。
私はピアノを弾いている時、「間違えたらどうしよう」という気持ちになったり、1度間違えたらそこから立て直せなくなったりすることがあります。
これはきっと、演奏自体を楽しめてない証拠なんですね。
「ピアノ演奏を楽しむ」と言葉にするのは簡単ですが、より良い演奏ができるようにしっかりと心に刻みたいと思います。
最後に、世界最高峰のカンファレンス「TED Talks」で、M.チクセントミハイが「フロー」について語っている映像をご紹介します(2004年・18分55秒)。
簡単には先にご紹介したとおりですが、ぜひ本人のスピーチをご覧ください。
ピアノ演奏時の心の持ち方とルーティーン
山あり谷あり?だけどやっぱりピアノが大好き!私の音楽人生でも触れていますが、私は人前でのピアノ演奏に大きな苦手意識がありました。
私は誰かに聴かれていると思うと、「失敗したくない」「上手だと思われたい」といった気持ちが大きくなり、緊張から手が震えたり頭が真っ白になったりしていました。
現在は自分なりに克服したつもりですが、上述した【ピアノ演奏でフローに入る5つの条件】を取り入れて、いつでもピアノ演奏に集中できるようになれたと思います。
ところで、読者様にはピアノを弾く時のルーティーンはありますか?
演奏会をイメージすると、舞台の上で歩く姿勢やピアノまでの歩数、お礼の仕方、椅子の高さ、椅子の座り方や座った時の足の位置、一音目を弾く時に考えること、呼吸・・・
例を挙げるとキリがないですが、私は自分なりのルーティーンを「フロー」に入る際の「スイッチ」にすると効果的だと思っています。
スポーツの世界ではこれを、「プレ・パフォーマンス・ルーティーン」といったりするそうです。
2015年ラグビーワールドカップで大活躍した五郎丸選手のポーズを思い浮かべると、なんとなく想像がつくかと思います。
あの時の五郎丸選手はキックがうまくいくように祈っていたわけではなく、キック前の一連の動作(ルーティーン)の1つがあのポーズだったというだけなのです。
他にも、イチロー選手がバッターボックスに立った時のルーティーンも有名でしたよね。
このように、本番で力を発揮するための自分なりのルーティーンを決めてみましょう。
ピアノの練習の際にも毎回行うことで、ベストパフォーマンスを発揮できるスイッチとなってくれると思います。
「いまここ」を意識して、ピアノ演奏を楽しもう!
では、今回のことをおさらいをしながら私自身にも言い聞かせることにします!
まず、練習でも自分なりのルーティーンでピアノに向かうことを決めましょう。
このことが、「フロー」に入るスイッチになります。
次に、チャレンジ精神や使命感を忘れず、「いまここ」を楽しんで演奏しましょう。
あくまでも私が提案する条件ではありますが、フローに入る5つの条件も参考にしてください。
- 頑張ったら手が届くぐらいの難易度にチャレンジする
- 曲の時代背景、情景、作者の心情などに思いを馳せる
- 誰かの(何かの)ために演奏するという使命感をもつ
- ただし、義務感ではなく能動的に楽しく演奏する
- 演奏を披露する機会をつくる
そして、条件の5つ目にも挙げましたが、「演奏を披露する機会」は技術の向上にもモチベーションの維持にも非常に大切です。
直接人前で披露する機会がなかったとしたら、本番さながらに動画撮影をしてみてください。
それだけで、緊張感をもって取り組むことができますよね。
そしてユーチューブにアップしたら、ぜひ仮想演奏会にエントリーしてください♪
フィードバックも得られますし、続けていくことで成長の記録にもなりますよ!
ちなみに、スマホでの撮影やユーチューブへの公開方法は以下で詳しくご紹介していますので、ご覧ください。
私と一緒に、ピアノを楽しんでいきましょうね♪
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。