「短調」と聞くと、「暗い」「悲しい」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?
たしかに、短調には少し影を感じるような響きがあります。
でも、短調の魅力はそれだけではありません。
力強くてかっこいい曲や、胸が締めつけられるような曲、どこか幻想的な曲など、短調で書かれた名曲はたくさんあります。
今回は、そんな短調のクラシック曲の中から、有名な5曲をご紹介します。
実際に曲を聴きながら、短調ならではの響きを楽しんでみてくださいね♪
まずは、長調と短調で何が違うのか、簡単に確認してみましょう。
長調と短調の違い
同じ「ド」から始まるハ長調とハ短調を比べてみます。
ハ長調
ド – レ – ミ – ファ – ソ – ラ – シ – ド
ハ短調
ド – レ – ミ♭ – ファ – ソ – ラ♭ – シ♭ – ド
ハ長調には調号がありませんが、ハ短調には「シ・ミ・ラ」の3つに♭がつきます。
特に注目したいのが、主音から数えて3番目の音です。
ハ長調では「ミ」、ハ短調では半音低い「ミ♭」になります。
実際にピアノが近くにある方は、
「ド・ミ・ソ」
「ド・ミ♭・ソ」
という2つの和音を弾き比べてみてください。
ミを半音下げるだけでも、響きの印象が大きく変わることがわかると思います。
音階だけではわかりにくかった方も、和音にすると違いを感じやすいですよ♪
長調と短調の違いを、実際に音で体験してみませんか?
「違いがあるのはわかったけれど、実際にどんなふうに聴こえるんだろう?」
そんな方は、音楽サイト「響」の無料体験ものぞいてみてください。
実際に音を聴きながら、長調と短調で感じ方がどのように変わるのかを体験できます。
難しい音楽理論を覚える前に、まずは自分の耳で違いを感じてみましょう。
ピアノで楽しむ短調のクラシック名曲
クラシック音楽では、長調と短調という言葉をよく目にします。
一般的に、長調は明るい響き、短調は暗く悲しい響きと表現されることが多いですよね。
でも、実際の曲を聴いてみると、それほど単純ではありません。
短調でも、テンポが速く力強い曲や、華やかに感じられる曲があります。
反対に、静かで穏やかな短調の曲もあります。
それではここから、短調で書かれたクラシックの名曲を聴いていきましょう。
幻想即興曲 Op.66 / ショパン
1834年、ショパンが24歳の頃に作られた作品です。
ショパンの作品の中でも、特に有名な曲のひとつですね。
ショパンは4つの即興曲を作曲しました。
《幻想即興曲》はOp.66という大きな作品番号がついています。
しかし、実は4曲の中でもっとも早く作曲された作品です。
ショパンの生前には出版されず、亡くなったあとに友人のユリアン・フォンタナによって出版されました。
即興曲とは、即興的な雰囲気をもつ器楽曲につけられた名称です。
ショパンの自筆譜には「即興曲」と記されています。
現在広く知られている《幻想即興曲》というタイトル。
これは、ショパンの死後、フォンタナが出版した版で使われたものです。
《幻想即興曲》は映画やアニメ、ドラマなどでも使われています。
ですので、曲名を知らなくても聴いたことがある方は多いかもしれません。
気になる難易度は、全音ピアノピースでE(上級)となっています。
原曲は難しい作品ですが、入門・初級向けにアレンジされた楽譜もあります。
「いつか弾いてみたい」という方は、自分に合った楽譜から楽しんでみるのもいいですね♪
ハンガリー狂詩曲 第2番 s.244-2 / リスト
《ハンガリー狂詩曲 第2番》は、リストが1847年に作曲したピアノ独奏曲です。
全19曲ある《ハンガリー狂詩曲》の中でも、特によく知られています。
ピアノ独奏だけでなく、管弦楽に編曲されたものも広く親しまれてきました。
作品名にあるように、リストの故郷ハンガリーの音楽から影響を受けた作品です。
ゆったりとした部分から、次第に勢いのある華やかな音楽へと変化していきます。
超絶技巧で知られるリストの作品だけあって、全音ピアノピースでの難易度はF(上級上)。
かなり難しい作品ですが、こちらも易しくアレンジされた楽譜があります。
ところで、「トムとジェリー」のアニメをご存じでしょうか?
「ピアノ・コンサート」でこの曲が使われているため、アニメで耳にしたことがある方もいるかもしれません。
愉快なアニメーションと難曲の組み合わせが楽しく、クラシック音楽を身近に感じられる作品です。
リストにご興味のある方はぜひコチラをご覧ください→「ピアノの魔術師」リストと代表曲をご紹介♪感動エピソードも
→ YouTubeで《ハンガリー狂詩曲 第2番》を聴いてみる
ピアノ・ソナタ 第14番「月光」Op.27-2~第1楽章 / ベートーヴェン
ベートーヴェンが30歳のとき、1801年に作曲したピアノソナタです。
通称「月光ソナタ」と呼ばれ、《悲愴》《熱情》とともに、ベートーヴェンの3大ピアノソナタとして親しまれています。
全3楽章で構成されており、中でも第1楽章はとても有名です。
ベートーヴェンが難聴を患っていたことをご存じの方も多いでしょう。
この作品を作曲した頃には、耳の異常を強く感じるようになっていました。
《月光》が出版された1802年には、「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれる手紙も書いています。
音楽家にとって、大きな苦悩を抱えていた時期ともいえますね。
今回取り上げている第1楽章は、ゆったりとしたテンポで進みます。
静かに流れる音を聴いていると、どこか神秘的な光景が浮かんでくるようです。
第2楽章、第3楽章と進むにつれて曲の表情は変わり、第3楽章では一気に激しさを増していきます。
全音ピアノピースでは、《月光》の難易度はE(上級)ですが、第1楽章は第3楽章ほど難易度が高くありません。
憧れの《月光》に挑戦したい方にとって、取り組みやすい楽章ではないでしょうか。
→ YouTubeで《ピアノ・ソナタ 第14番「月光」Op.27-2》を聴いてみる
ワルツ 第7番 Op.64-2 / ショパン
今回ご紹介する2曲目のショパン作品です。
ショパンがピアノ独奏のために作曲したワルツのひとつ。
生前に出版された最後期の作品です。
自由に揺れるようなテンポが魅力で、演奏者によっても曲の表情が変わります。
全音ピアノピースでの難易度はC(中級)。
今回ご紹介している5曲の中では比較的取り組みやすい曲です。
そのため、ピアノのレッスン曲として演奏されることもあります。
作品64には3つのワルツがあり、いずれもショパンが36~37歳頃に作曲した作品です。
ショパンが亡くなったのは39歳。
晩年に書かれたワルツのひとつとして聴いてみると、また違った印象を感じるかもしれませんね。
ショパンのワルツをもっと聴いてみたい方は、こちらでも紹介しています。→ショパン ピアノのための有名ワルツ
→ YouTubeで《ワルツ 第7番 Op.64-2》を聴いてみる
ヴォカリーズ Op.34-14 / ラフマニノフ
1915年、ロシアの作曲家ラフマニノフ(1873-1943)によって作曲された、ピアノ伴奏つきの歌曲です。
ラフマニノフの歌曲の中でも、特によく知られている作品です。
作曲者の生前から人気が高く、さまざまな楽器のために編曲されてきました。
《ヴォカリーズ》の大きな特徴は、歌詞がないこと。
「アー」「オー」といった母音だけで歌います。
「ヴォカリーズ」とは、歌詞を使わず、母音などで歌う声楽曲のことです。
作品34は一度完成したあと、約3年後に《ヴォカリーズ》が加えられ、14曲からなる作品集となりました。
ほかの13曲には歌詞がありますが、《ヴォカリーズ》には言葉がありません。
だからこそ、言葉の意味にとらわれることなく、旋律そのものを味わえるのもこの曲の魅力ではないでしょうか。
歌だけでなく、さまざまな楽器で演奏されているので、聴き比べてみるのも楽しいですよ♪
→ YouTubeで《ヴォカリーズ Op.34-14》を聴いてみる
ここまで5曲をご紹介してきました。
「短調=暗い」というイメージだけでは説明できない、さまざまな表情がありましたよね。
原曲の難易度が高い作品でも、初心者向けにアレンジされた楽譜が見つかることがあります。
気になる曲があったら、自分のレベルに合った楽譜で楽しんでみるのもおすすめです。
ところで、ここまでご紹介した5曲には、もうひとつおもしろい共通点があります。
名曲のもつ調の不思議
今回ご紹介したのは、次の5曲です。
- 幻想即興曲 Op.66 / ショパン
- ハンガリー狂詩曲 第2番 s.244-2 / リスト
- ピアノ・ソナタ 第14番「月光」Op.27-2~第1楽章 / ベートーヴェン
- ワルツ 第7番 Op.64-2 / ショパン
- ヴォカリーズ Op.34-14 / ラフマニノフ
こうして並べてみると、同じ「短調」の曲でも、悲しさだけでなく、力強さや華やかさ、幻想的な雰囲気など、感じ方はずいぶん違いますよね。
さらに面白いのが、短調にも「ハ短調」「ニ短調」「嬰ハ短調」など、さまざまな種類があることです。
ここでは、今回ご紹介した曲にも登場した嬰ハ短調を例に、もう少しだけ見てみましょう。
「嬰ハ短調って何?」
そう思った方もいるかもしれませんね。
ここからは、嬰ハ短調について少し見ていきましょう。
嬰ハ短調とは
嬰ハ短調は、「嬰ハ」を主音とする短調です。
まず、「嬰(えい)」はシャープ(♯)を表します。
そして、日本語の音名では、
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ
=
ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ
と表します。
そのため「嬰ハ」は「ド♯」です。
楽譜の先頭部分をご覧ください。
シャープが4つあるのがわかりますね。
このシャープが「ド・レ・ファ・ソ」についているんです。

音階を表わすと、こうなります。

つまり嬰ハ短調は、ド♯を主音とする短調ということになります。
嬰ハ短調の調号には、4つのシャープがあります。
シャープがつくのは「ド・レ・ファ・ソ」です。
ここで、
「これってホ長調と同じでは?」
と気づいた方もいるかもしれません。
その通りです。
ホ長調にも「ド・レ・ファ・ソ」の4つにシャープがつきます。
嬰ハ短調とホ長調を聴き比べてみよう
同じ調号を使う嬰ハ短調とホ長調は、平行調という関係にあります。
同じ音にシャープがついていても、主音や音の使われ方が変わることで、曲から受ける印象も変わります。
実際に嬰ハ短調の曲とホ長調の曲を聴き比べてみると、その違いを感じやすいですよ。
たとえば、リストの《コンソレーション 第2番》はホ長調で書かれています。
今回ご紹介した《ハンガリー狂詩曲 第2番》には、嬰ハ短調で書かれた部分があります。
同じリストの作品ですが、聴いたときの印象はずいぶん違います。
同じ作曲家の作品で、平行調の響きを聴き比べてみるのもおもしろいですね♪
→ YouTubeで《コンソレーション 第2番》を聴いてみる
短調の曲をピアノでも楽しんでみよう
今回は、短調で書かれたクラシックの名曲をご紹介しました。
短調には悲しさや切なさだけでなく、力強さ、かっこよさ、幻想的な美しさなど、さまざまな魅力があります。
今回取り上げた嬰ハ短調にも、曲によってさまざまな表情があります。
同じ短調でも、調や曲によって感じる雰囲気は変わります。
「この曲、なんだか好きだな」
そんな曲を見つけたら、何調で書かれているのか調べてみるのも楽しいですよ。
「なんとなく感じる」を、もう少し深く楽しみたい方へ
曲を聴いて、
「明るい感じがする」
「少し切ない」
「なんだか力強い」
そんな印象を持つことはありませんか?
音楽を楽しむために、難しい言葉をたくさん覚える必要はありません。
でも、自分が音から感じたことを「どうしてそう感じたんだろう?」と考えてみると、いつもの曲が少し違って聴こえてきます。
音楽サイト「響」では、長調と短調を音から学ぶ講座についても詳しくご案内しています。
「長調と短調の違いをもっと知りたい」
「自分が感じたことを、自分の言葉で話せるようになりたい」
そんな方は、講座の内容ものぞいてみてくださいね。
そして、音楽の楽しみ方は「知ること」だけではありません。
やっぱりピアノは、自分で弾いてみるのも楽しいですよね♪
