読者様は、ピアノの「蓋」といったら、何を想像されるでしょうか?
グランドピアノの胴体部分?それとも鍵盤の蓋?
ピアノには、ご存じの通り2種類の蓋があります。
でも、レッスンや練習の時などに何気なく開けたり閉めたりしているあの蓋たちについて、じっくりと考えてみたことがある読者様って、実は少ないのではないでしょうか。
例えば、グランドピアノの胴体部分にある蓋って、何のために開くのかご存じですか?
今のピアノの鍵盤用の蓋は、昔のピアノのものと違っているんですよ。
今回は、一般的にピアノの「蓋」と言われる部分、「屋根」と「鍵盤蓋」についての、よくある疑問5つについてお答えします。
・ピアノの蓋って閉めておいたほうがいいの?
・グランドピアノの屋根ってなんの意味があるの?
・アップライトピアノの屋根も開く?
・蓋の間にものを落としてしまった!どうすればいい?
・鍵盤蓋の指はさみ防止策はあるの?
ピアノの蓋 それぞれの名称
さて、ピアノの蓋、蓋と言ってきましたが、ピアノの2つの蓋にも名前があります。
簡単にどちらも「蓋」と一緒に言ってしまっていましたが、それぞれ全く違う役割を持った部分です。
ピアノの屋根
グランドピアノの胴体部分、鳥の羽のような形をした大きな蓋のことは「屋根」、鍵盤を覆う蓋は「鍵盤蓋」といいます。
独特の曲線を描く大きな屋根は、グランドピアノの象徴とも言える部分ですよね。
その形から、「翼」と言われることもあります。
屋根が開いている時、中でハンマーが動く様子を見ながらピアノを聞くのが私は好きなのですが、弾いている人からは結構嫌がられます(笑)
(引用:サウンドハウス)
ピアノに座った時に目の前に来る長方形の部分を前屋根、突上棒で支えて開く方を大屋根といいます。
ピアノの鍵盤蓋
ピアノを弾かない時に閉めておいて、ピアノの鍵盤が傷ついたり汚れたりするのを防ぐ鍵盤蓋。
鍵がかかるものもあって、開けると「よし、練習だ!」と気合が入りますよね。
グランドピアノの鍵盤蓋や、一部のピアノの鍵盤蓋は、開け閉めする時にピアノの中が少し見える構造になっています。
アップライトでは、一般的には中に譜面台が折りたたまれているものが多いですね。
あまり見かけませんが、スライド式や折りたたみ式の鍵盤もあります。
ピアノの蓋って閉めておいたほうがいいの?
ピアノの屋根と鍵盤蓋、どちらも普段は閉めていて、レッスンや練習のときだけ開ける、という読者様は多いのではないでしょうか。
逆に、面倒だからとどちらも常に開けっ放しの人もいらっしゃるかもしれませんね。
特に、グランドピアノの屋根の方は重いので、毎回開け閉めするのは大変なだけでなくちょっと危険でもありますよね。
でも、蓋なんだし、毎回閉めておいたほうがいいのでは?と考えて開け閉めしているマメな読者様に朗報です。
実は、ピアノの屋根も鍵盤蓋も、どちらも開けっ放しでも大丈夫なんです。
「開けっ放しにしていて、ホコリが入ったりしないのかしら」と気になるところですが、きちんと調律をしているピアノなら、あまり気にする必要はないそうです。
調律時に中の掃除までやっているから、そこまでホコリがたまったりすることはないんだとか。
特に鍵盤蓋は、閉めているとそれだけで練習がおっくうになってしまいがちなので、常に開けたままにしていることを推奨しているピアノの先生もいらっしゃるくらいです。
思い立ったらすぐピアノに触れるよう、少しでもハードルを下げることも、日々の練習を続けるには大事ですね。
グランドピアノの屋根ってなんの意味があるの?
では、この屋根は一体何のためにあるのでしょうか。
見栄えの問題・・・確かに開いていたほうが格好いいですが、そうではありません。
実は、グランドピアノの屋根は開き具合で音の響き方を調節できるのです。
同じように弾いても、屋根が閉まっている時はくぐもって小さな音、開いている時には響きのある大きな音になります。
また、屋根自体も音を反射させるので、ピアノの右手側に音がよく聞こえるようになっています。
そう言われてみれば、ピアノのコンサートでは決まって左側に演奏者が座りますね。
ピアノの音が向かう方向に観客席が来るようになっているんですね。
屋根の開き方には、全開と半開の2つのパターンがあります。
ピアノによってはもう1本小さな突上棒がついていて、さらに小さく、少しだけ開けられることもあります。
ピアノの音を大きく出したい時、つまりピアノのみのコンサートやオーケストラの中で使用する時は全開にします。
ヴァイオリンなどの伴奏として、他の楽器を引き立たせたい時は半開にしたり、小さい突上棒を使用したりします。
個人の家でグランドピアノを弾く場合は、音の問題から普段は全部閉めているか、開けても前屋根だけで練習している人が多いようです。
まれに、弾き振り(オーケストラの指揮をしながら、ピアノも弾くこと。『のだめカンタービレ』で千秋がやったことでちょっと有名になりましたね)や、2台ピアノのときなどには屋根を全部取ってしまうこともあります。
弾き振りの時には指揮者の位置、つまりど真ん中にピアノがあるので、屋根があると邪魔な上に他の楽器の音も遮ってしまいます。
(引用:YouTube)
かなり長い動画ですが、こちらの動画を見ると弾き振りの様子が分かりやすいかと思います。
2台ピアノのときも、ピアノを互い違いに置くので、手前側、つまり通常と逆向きに置いたピアノの屋根が開いていると、ピアノの間に音がこもってしまいます。
(引用:YouTube)
2台ピアノのときはこんなふうにピアノを置きます。
屋根の開き方を調節することで、それぞれの音楽やシーンに合わせて適した音が出せるようになっているんです。
アップライトピアノの屋根も開く?
グランドピアノの屋根について、音量や音質の調整をしたり、音を響かせたりする役割があるということは分かりました。
でも、アップライトのピアノには屋根がないから、家のピアノにはあんまり関係ない・・・と思ってはいないでしょうか。
実は、アップライトピアノにも屋根があるんです。
開けて演奏することもできます。
(引用:サウンドハウス)
アップライトピアノの一番上の部分が屋根(前屋根)です。
持ち上げるだけで、簡単に開きます。
真ん中で2枚に折り畳めるようになっているので、パタンと向こう側に折り重ねるだけです。
ピアノによっては、中に突上棒に相当するようなストッパーがあり、グランドピアノのように屋根を開けた状態で演奏することもできます。
開けてみたら、中を見てみるといいでしょう。
この前屋根を開けて演奏するだけでも、音の響きは全く異なってきます。
「えっ、こんなにクリアな音が家のピアノで出せたんだ!」とビックリするはずです。
もっと音を響かせたい!という人は、さらに上前板と鍵盤蓋を外すと音の広がりを楽しめます。
上前板とは、アップライトピアノの前面にある板のうち、上側のもののことです。
前屋根を開けたあと、上からのぞき込むと留め具があるのが分かると思います(ないものもあるようです)。
留め具を外して、少し持ち上げると外せます。
鍵盤蓋はピアノの鍵盤を覆う蓋ですね。
これも、開いて上や斜め上などに持ち上げると外せます。
見た目が全く変わってしまうので、一見大掛かりなことをしているようですが、実際の手順としてはそんなに難しいことはありません。
しかし外すことはできても、自分でうまく戻せないと、ピアノに傷がついたり、調律師さんを呼ぶ羽目になったりしてしまいます。
「ピアノを絶対に傷つけたくない」という人や、「家具の組み立てなどは苦手だ」という人は、前屋根を開けるまでにしておいたほうが無難です。
また、鍵盤蓋まで全部外してしまうとかなり音が大きくなります。
ご近所の迷惑にならないよう、ピアノを弾く時間帯には注意しましょう。
前屋根を開けるだけでも、きれいに音が響くようになりますので、家にアップライトピアノをお持ちの方はぜひ一度試してみてください。
自分のタッチがピアノの音色にダイレクトに反映されている実感が得られますよ♪
鍵盤蓋の間にものを落としてしまった!どうしたらいい?
グランドピアノを弾いている時、ちょっとした拍子に開けているピアノの鍵盤蓋と譜面台の間に鉛筆や楽譜が落ちてしまったこと、ないでしょうか。
私はあります(笑)
子供の頃、先生の家にあったグランドピアノの中に、鉛筆やらクリップやら、何度落としたことやら・・・
グランドピアノや一部のアップライトピアノの蓋は、開け閉めする時にピアノの内側との間に隙間ができます。
落ちた時、蓋を閉めないようにそうっと横から取れる場合もあるのですが、大抵はそのままピアノの中に転がっていってしまいます。
そうなると、普通には取れません。
そんなに大切なものではなくて、落ちていても音などに支障がない場合は、そのまま放っておいて大丈夫です。
次に調律をしてもらう時にお願いして、一緒に取り出してもらいましょう。
カチャカチャ音がしている時も、しばらくそのあたりを弾いているとうまいこと落ち着くのか、音がしなくなることもあります。
しかし、大事なものを落としてしまった時や、お花など、水分のあるものが落ちてしまった時は拾わないといけませんよね。
いつまでたってもカチャカチャ音がする時も同様です。
調律師さんを呼べば確実ですが、スマホやリモコンなど、すぐに拾えないと困る場合もありますし、今すぐ取り出したい状況の時もあると思います。
そんな時は、自分でピアノの鍵盤蓋を外して、中のものを取れるんです。
実はピアノの鍵盤蓋は、グランドピアノもアップライトピアノも、ほとんどの場合は簡単に外れるんです。
全開にした状態か、そこから少し手前側に傾けて上に持ち上げると、それだけで外れるようになっています。
はめる時は、また逆のことをすればいいだけです。
ただし、こちらも「ピアノを絶対に傷つけたくない」「自信がない」という人は最初から調律師さんにおまかせしたほうが確実です。
また、鍵盤蓋は結構重いので、できるなら2人でつけ外ししたほうがいいでしょう。
こちらの動画がわかりやすく解説してくれています。
(引用:YouTube)
ピアノを作った会社によっては、左右の拍子木部分と蓋がくっついていて、簡単に外れない場合もあります。
この場合は拍子木と一緒に外さないといけないようです。
(引用:YouTube)
こちらのタイプは、おとなしく調律師さんに頼んだほうが良さそうですね。
指をはさみそうで怖い・・・どうすればいい?
蓋といえば気をつけなければいけないのが指はさみの事故。
鍵盤蓋は重いので、一瞬の気の緩みが大きなけがにつながってしまいます。
特に小さなお子様がピアノを弾く場合や、高齢者の場合は怖いですよね。
今のピアノはソフトランディング機構といって、ゆっくりと鍵盤蓋が下りてくるような機能が最初からついていますが、昔のピアノの場合はバタン!と蓋が閉まってしまいます。
ピアノはきちんと手入れをすれば長く使えるもの。
しかしだからこそ、まだソフトランディング機構のついていないピアノも多くあります。
そんな場合には、指はさみ防止器具を取り付けるといいでしょう。
インターネットで「フィンガード」と検索すると、いろいろな商品が出てきます。
しかし、この指詰め防止グッズは、グランドピアノやグランドピアノと同じタイプの蓋、そしてスライド式や折りたたみ式の蓋の場合には装着できません。
強力な粘着テープやネジ止めが必要なので、借り物のピアノなどの場合にも不向きです。
そんな時は、単純にドアストッパー・ドアクッションを鍵盤蓋、もしくはピアノの左右につけておくだけでも事故防止になります。
バタンと閉まってくることまでは防げませんが、指を挟むことを避けられます。
この場合は「できるだけ蓋と鍵盤の間を空けること」が目的となるので、スタイリッシュな細身のものではなく、大きなストッパーを使ったほうが良いようです。
また、そこまでお金をかけたくない、という場合は100円ショップの赤ちゃん用の扉いたずら防止ロックを活用している方もおられるようです。
見栄えがちょっと悪くなってしまいますが、自分しか使わないピアノならそれでも十分ですね。
意図せず蓋を閉めてしまう事故は、蓋の開け閉めをする時や譜面に書き込みをする時に起こりやすいもの。
特に子供の場合は、蓋の開け閉めは必ず大人が行うようにする、というのも事故防止には役立つでしょう。
ピアノ本体を選べる場合は、スライド式や折りたたみ式の蓋を選ぶのもいいですね。
ピアノの蓋について
今回は、ピアノの蓋、屋根と鍵盤蓋についてのよくある5つの疑問にお答えしました。
・ピアノの蓋は開けっ放しでもOK!
・ピアノの屋根には、音量や音質を調整する役割がある
・アップライトピアノの屋根も開く
・鍵盤蓋は簡単に外せる!
・鍵盤蓋には専用の指はさみ防止器具がある
一口にピアノの蓋と言っても、さまざまな機能がありましたね。
今日練習をする時には、ぜひ「蓋」にも注目してみてください。
アップライトの屋根を開けてみるとどう音が変化するのか、本当に鍵盤蓋が外れるのか・・・新たな発見があるかもしれませんよ♪
お読みいただきありがとうございました!