
ピアノ愛好家の皆様は世界三大ピアノ(メーカー)のひとつであるベーゼンドルファーをご存じでしょうか?
佇まいは気品に溢れ、柔らかく多彩な音色に心をつかまれますね。
有名な音楽家からもたくさん愛されています。
ピアノメーカーとして非常に有名ですが、なぜ、世界三大ピアノメーカーのひとつになれたのでしょうか。
この記事では、「ベーゼンドルファー」とはよく聞くけれど、それ以上のことは知らないという方のために、その理由と特徴を色々な面から紐解いていきます。
ぜひ最後までお読みくださいね。
ベーゼンドルファーの製作
ベーゼンドルファー社が世界三大ピアノメーカーのひとつになれた理由
ベーゼンドルファーと関係が深いピアニスト達
ベーゼンドルファー社の歴史
ベーゼンドルファー社は現存する世界最古のピアノメーカーです。
では当社の歴史を詳しくご紹介します。
ベーゼンドルファー社は1828年に音楽の都ウィーンで、イグナツ・ベーゼンドルファーによって創業されました。
イグナツは19歳のときに、当時もっとも有名だったピアノ製作者の一人、ヨゼフ・ブロッドマンに弟子入りし、才能を発揮していきます。
そして、1828年に引退したブロッドマンから事業を譲り受け、後年、世界三大ピアノメーカーと呼ばれる「ベーゼンドルファー社」が誕生しました。
イグナツは設立資金を500グルデン出資していましたが、1859年に亡くなったときの資産価値は14,500グルデンになっていました。
約30年で資産価値を290倍に上げたことは、驚きですね。
しかし、約150年後の2008年には経営上の理由のため、ヤマハがベーゼンドルファー社の経営権を保持しています。
この件については後程詳しくご説明します。
現在もウィーンでベーゼンドルファー社は、創業当時の伝統を守りながらピアノを製作しています。
ベーゼンドルファーの製作
ベーゼンドルファーは手作業で製作されており、お客様のもとに届くまでに6年の歳月を要し、そのうちの1年は組み立てに費やされます。
創業から現在までの約200年で約5万台を作っており、つまり1年間に約250台しか生産できません。
使用される素材と技術
ピアノ製作に必要な木材やパーツ、技術にはとてもこだわりを持たれています。
いくつかご紹介します。
- 他のメーカーと異なり80%以上使用
- 樹齢100年のオーストリア産で標高800m以上の環境で育ったもの
- 自然乾燥で、太陽や風、激しい気温の差にさらすことで共鳴する木材になる
- 年輪が詰まっていて、音がピアノ全体に伝わりやすくなる
- 限られた職人だけが手巻き作業をする
- 全ての低音弦が手巻き
- ベーゼンドルファー特有の温かい、深みがある低音になる
- ピアノメーカーで唯一着脱式のカポダストロを使用
- もっとも正確な高音域の調整が可能
創業から200年近く守り続けている工法や職人のこだわりから、完成までに6年を要するのが分かりますね。
全て職人によって手作業されている動画を見てみましょう。
引用:YouTube
職人の真剣な眼差しと一つ一つ丁寧に作業されている様子を見ると、創業からの伝統と美しい音色を守っていかなければいけない覚悟が垣間見られます。
ベーゼンドルファー社が世界三大ピアノメーカーのひとつになれた理由
ベーゼンドルファー社はどのようにして世界三大ピアノメーカーになれたのでしょうか。
理由はベーゼンドルファーの特徴である3つが挙げられます。
- ウィンナートーン
- 革新的な技術
- 創業からの伝統を守り続ける
ウィンナートーン
ウィンナートーンとは、ベーゼンドルファー特有の音色を差し、温かみと深みのある音色で、オーケストラが奏でるような豊かな響きが特徴です。
ピアニッシモからフォルテッシモまで幅広く繊細な表現が可能で、これらは約200年の歴史の中で育まれてきました。
革新的な技術
先に書いたスプルース材とカポダストロ以外にも、シングルストリングス(総一本張り)が挙げられます。
弦が1本1本独立して張られているため、演奏中に中音域の弦が1本切れたとしても3本のうち2本が残るため演奏を中断せずに弾き続けられます。
創業からの伝統を守り続ける
創業当時から変わらず、職人の手作りで設計・製作されているため生産が年間約300台のペースと長い時間と費用がかかります。
そのため、経営状態が悪化し、一時は工房に作りかけのピアノが何台もあるという事態に陥りました。
そこで登場したのがヤマハです。
ヤマハ傘下への移行
ベーゼンドルファー社は、職人が一つ一つ丁寧にピアノを製作しているため、長い年月と大変な費用が掛かります。
そのため、ベーゼンドルファー社は経営が難しくなっていきます。
そこで、2008年にヤマハ傘下へ入ります。
ヤマハはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の要請で、ウィーンの音を継承するためにウィーン専用楽器の開発を手掛けていました。
伝統的なピアノ製造技術の伝承を支援するという立場にあり、ベーゼンドルファーはこれまで通りにピアノ製作しています。
ヤマハもピアノメーカーで、ヤマハの技術がありますが、ベーゼンドルファーを尊重して、製作スタイルを守り続けているというのが素敵ですね。
日本のピアノメーカーが世界のピアノメーカーを守っていると思うと誇らしいです。
ベーゼンドルファーの演奏紹介
それでは、ここでベーゼンドルファーの音色を聴いてみましょう。
佐藤卓史さんの演奏で「シューマン/リスト 献呈 Op.25-1 (S.566)」
引用:YouTube
ピアノ愛好家の皆さまはどのように思われたでしょうか?
200年の伝統とピアノの温かな音色が感じられませんか。
もう一人の演奏も聴いてみましょう。
久元祐子さんの演奏で「モーツァルト ロンドニ長調 K.485」
音楽の中心地であるウィーンで生まれ、200年の伝統が継承されていると思うと、一音一音が胸にドスンと響きますね。
ベーゼンドルファーの音色を生演奏で聴いてみたい方は、ショールームに出向いてみてくださいね。
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい5-1-2
横浜シンフォステージ ウエストタワー1F
電話:045-307-1012
試弾可能:水曜日~土曜日 11:00-18:00
【アクセス】
・京浜急行本線/JR各線/東急東横線/相鉄本線/みなとみらい線/横浜市営地下鉄ブルーライン「横浜駅」東口から徒歩8分
・みなとみらい線「新高島駅」3番出口から徒歩1分/「みなとみらい駅」1番出口から徒歩7分
ベーゼンドルファーと関係が深いピアニスト達
ベーゼンドルファーと関係が深いピアニストがたくさんいます。
その中から3名をご紹介します。
フランツ・リスト
ベーゼンドルファーを一躍有名にする「運命の人」です。
リストの激しい演奏にピアノが耐えきれず壊れてしまうことが多かったのですが、ベーゼンドルファーのピアノは演奏に耐えきれました。
これを機にベーゼンドルファーは一躍有名になります。
リストがベーゼンドルファーを有名にするきっかけになっていたんですね。
久元祐子
ベーゼンドルファー公認アーティスト、つまり、ピアニストとして演奏活動教育活動を通して、ベーゼンドルファーの音色や魅力を多くの人に伝えていく役割を持っています。
「ベーゼンドルファー280VC Pyramid Mahogany」は、ウィーンの工房で特別に製作されました。
鍵盤の低音部側には久元さんのお名前が刻印されています。
このピアノについて次のように仰っています。
指の動きに敏感に応えてくれる楽器です。まるで指に吸い付くかのような繊細さを持っていると言えば良いでしょうか。それでいて、デュナーミクの幅広さは、これまで接したピアノの中でも群を抜いており、ppppからffffまでの表現を可能にしてくれます。
引用:mora
木住野佳子
1995年に名門レーベルGRPレコードから日本人初のインターナショナル・アーティストとしてデビュー。
2002年にベーゼンドルファー社から日本で初めてオフィシャル・アーティストとして認められたジャズ・ピアニストです。
ブログに「ベーゼンドルファーラブ」と書いているほど、ベーゼンドルファーに惚れています。
ベーゼンドルファーを知ってもらうためのコンサートや活動を積極的に行われています。
ベーゼンドルファーの伝統が守り続けられますように
ベーゼンドルファーの歴史や魅力などについてお伝えしました。
これまでの伝統や大切にされていることなど、ピアノ作りへのこだわりや情熱を知ると、いつまでも続くピアノメーカーであることを願います。
最後にベーゼンドルファーについて振り返ってみましょう。
- 世界最古のピアノメーカー
- 有名になったきっかけは、リストが弾いたこと
- 2008年にヤマハの傘下に入る
- フランツ・リスト、久元祐子、木住野佳子などの有名ピアニストに愛されている
現存する世界最古のピアノメーカーとして、これからも素敵なピアノを生み出していってほしいです。
いつかベーゼンドルファー社でピアノ作りを見てみたいですね。
こちらの記事もぜひお読みください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。