ピアノを弾き始めた最初のころは、白鍵や黒鍵を押して音が鳴るだけでも楽しいですよね。
ですが、ピアノが少し上達してくると、鍵盤を弾くだけでは物足りなくなってきて・・・段々足元のペダルが気になってきませんか?
プロのピアニストがペダルを踏みながら格好良く弾いているところを見ると、「私もペダルを使いこなしたい!」と思いますよね。
しかし、ピアノにペダルは3本もあるというのに、最初のうちは教本にもレッスンにも一切出てきません。
それでは使い方もよくわかりませんし、いつ使っていいかわかりませんよね。
先生に聞くのも、「まだ初心者なんだから、そんなことを気にする必要はないの!」と思われてしまいそうで、恥ずかしくて聞けず、結局よくわからないまま過ごしている・・・そんなことになっていませんか?
実は、1番右側のペダル以外、よくわからないままで来てしまっているピアノ経験者は少なくないんです!
今回は、皆が疑問に感じている、ピアノのペダルとその記号について、徹底的に解説しちゃいます!
・ピアノペダルの名前(グランドピアノ・アップライトピアノ)
・3本のペダル(右側・中央・左側)の演奏記号と意味、使い方
・楽譜にペダル記号がない・・・その理由は?
ピアノのペダルを使いこなせると、より豊かで感情的な表現ができるようになります♪
何より、弾いているときに音色の変化があるので、ピアノを弾くのがより楽しくなります。
この記事で、ペダル利用時の音の変化と、記号の読み方を知って、ペダルについての疑問を解消しちゃいましょう!
ピアノペダルの記号と名前
まずは、ピアノのペダルそれぞれの名前を確認しておきましょう。
グランドピアノとアップライトピアノ、どちらのピアノにもペダルは3本ずつありますね。
ですが、実はグランドピアノとアップライトピアノでは、名前と使い方が違うペダルがあります。
どちらもピアノなので、同じ機能を持ったペダルが付いているのかと思いきや、こんなところにもグランドピアノとアップライトに違いがあるとは意外ですよね。
右:ダンパーペダル
中央:ソステヌートペダル
左:シフトペダル
右:ダンパーペダル
中央:マフラーペダル
左:ソフトペダル
中央のペダルと左のペダルが違っていますね。
レッスンなどで違うピアノに触れる機会があれば、踏み比べてみるといいかもしれません。
また、各ペダルの演奏記号は以下の通りです。
踏む時 | 離す時 | |
ダンパーペダル |
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク) |
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク) |
もしくは |
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク) |
|
ソステヌートペダル | pedale sostenuto (p.s.) | |
シフトペダル・ソフトペダル | una corda (u.c.) | tre corde (t.c.) |
電子ピアノも、音の出し方は違いますが、ペダルが付いているものはグランドピアノと似たような効果が得られるようになっています。
ただ、機種によってはペダルが「効いている・効いていない」の2つの状態しか存在しないものもあります。
ペダルを少しだけ踏んだりする技法もあるので、もし気になる人は購入時に説明をよく聞いたり、カタログなどを読み込んでから電子ピアノの機種を決めるようにしましょう。
また、ペダルが2本もしくは1本しかないピアノも存在します。
古いピアノは2本ペダルの形が多くありますし、電子ピアノやキーボードに後からペダルを取り付ける場合は、ペダルが1本になる場合がほとんどです。
2本ペダルの場合はダンパーペダル&シフトペダル(ソフトペダル)、1本だけの場合は、ダンパーペダルのみという構成です。
右側にあるペダル:ダンパーペダル
まずは、1番右側にあって1番多く使われるペダル、ダンパーペダルについて見てみましょう。
ピアノでペダルと言った時にはこのダンパーペダルのことを指すくらい、3本の中でも重要なペダルです。
ペダルテクニックといった時にまず問題となるのもこのペダルですし、これしか使ったことがない、という読者様もいらっしゃるかもしれませんね。
ダンパーペダルの演奏記号
ダンパーペダルを踏んだり離したりすることを表す演奏記号には、2通りの書き方があります。
1つ目は楽譜の下側に書かれる記号で、以下が踏む時のものです。
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク)
足を離す時は、下の記号です。
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク)
よくよく見ると、”ped.” と書かれているのが分かりますね。
それぞれ、踏むときの記号をペダル、離すときのお花のようなマークをセンツァといいます。
マークではなく、「senza Ped.」(センツァペダル)と書かれることもあります。
2つ目は、ペダル線といって以下の書き方です。
(引用:ウィキメディア・コモンズ CC 表示-継承 3.0, リンク)
これも五線譜の下に書かれており、カッコの始まり部分で踏んで、終わり部分で足を離します。
見たまま直感的にペダル操作ができますね。
ダンパーペダルの効果
ダンパーペダルを踏むと、弾いた音がほわんと響くようになります。
エコーが掛かった風になる、といえば分かりやすいでしょうか。
利用した時に音の変化がよく分かり、曲が一気に華やかになるので、初心者のうちはこのペダルに憧れる人も多いですよね。
表現の幅が広がるだけでなく、踏み方1つで曲の表情が全然異なってくるので、演奏者の力量や表現力が試されるペダルでもあります。
反響して音が大きくなったようにも聞こえるので、「ラウドペダル」「フォルテペダル」という別名もあります。
ダンパーペダルを踏みこむと、ピアノ内部の「ダンパー」という部分が弦から浮きます。
グランドピアノの中をのぞくと、上からピアノの弦を押さえている黒い木とフェルトが合体した部品が見えますが、その部分のことです。
ダンパーは、普段は不必要にピアノの弦が鳴らないように押さえてくれています。
ペダルを踏むとダンパーがすべて外れるので、弾いた弦だけではなく、他の弦も共鳴して音が響き続けるようになります。
ロマンティックな広がりのある響きは、幻想的な雰囲気の曲や、ゆったりとした曲にぴったりです。
ちなみに、電子ピアノでは、実際に弦をたたいて音を出すわけではないので、ダンパーは存在しません。
そのため、ダンパーペダルではなく、「サスティンペダル」と呼ばれます。
しかしその場合も、ダンパーペダルを踏んだ場合と同じような、ほわんと響く音が出る仕組みになっています。
中央にあるペダル:ソステヌートペダル or マフラーペダル
次は、真ん中にあるペダルを見ていきましょう。
中央にあるペダルは、グランドピアノではソステヌートペダル、アップライトピアノではマフラーペダルという名前です。
名前が違うだけでなく、果たす役割も異なっています。
簡単に言ってしまえば、グランドピアノのソステヌートペダルは「演奏超上級者向けペダル」で、アップライトピアノにあるマフラーペダルは「家での練習用消音ペダル」です。
アップライトピアノは家に置いて練習することを想定して作られているんですね。
電子ピアノの場合は、ヘッドホンなどで消音ができ、あえてペダルを使って音を消す必要がないため、ソステヌートペダルがついています。
ソステヌートペダルの演奏記号
ソステヌートペダルを踏む時は「pedale sostenuto」と表記されます。
p.s.が略称です。
略称で書かれると「追伸?」と戸惑いそうですが、全文で書かれていればまず間違えませんね。
ペダル線を使う場合には、始まりの部分に「Sost.」と書かれます。
ダンパーペダルと同じく、カッコの始まりで踏んで、終わりで足を離します。
ソステヌートペダルの効果
グランドピアノの真ん中にあるペダル、ソステヌートペダルを踏んだ時の効果は、「任意の音だけを響くようにする」というものです。
アップライトピアノでも、高級なグレードのものにはソステヌートペダルがついているものもあります。
ダンパーペダルを踏んだ時には、全てのダンパーが外れるので、踏むとその後に弾いたすべての音が混ざって長く響いていました。
しかし、ソステヌートペダルでは、ペダルを踏む直前に弾いた音だけダンパーが外れるので、その音だけを濁らず長く残し、それと同時に他の音を普通に弾くことができます。
つまり、ベースとなる音を残しながら、同時にスタッカートなどを多用したリズム感のある曲を弾くことが可能となるんです!
それを聞くと、演奏の幅を大きく広げてくれるすばらしいペダルのように感じますが、なかなか実際に使いこなすことは難しく、踏んだことのない人が大半です。
あまり活用されないのには、ダンパーペダルのように聞いてすぐに効果が分かるものではなく、使うのは難しいのに、使っても使っていなくてもあまり音色に変化がない・・・という理由もあります。
ピアノの先生によっては、プロでない限りは使う必要はないとまで言うこともありますし、ハーフペダル(半ペダルとも。ダンパーペダルを半分だけ踏んだ状態)でも似たような効果が出せるので、それで十分だという人もいます。
ピアノの弾き方を学んでいるうちは難しい、ということなのかもしれませんね。
ちなみに、ピアノの話から少し逸れますが、ソステヌートペダルという名前の競走馬がいます。
名前の由来はずばりこのペダル。
2017年生まれの雄馬ですが、結構注目されているようです。
1つの音だけ伸びることと、成績や競馬の時に”伸びる”ことをかけて名付けられたのかもしれませんね。
マフラーペダルの演奏記号
マフラーペダルは音を小さくして練習することを目的として利用されるもので、演奏時に使うことはありません。
そのため、演奏記号も存在しません。
マフラーペダルの効果
アップライトピアノでは、真ん中にあるペダルはマフラーペダルという名前の消音用のペダルになります。
マフラーという名前からなんとなく想像がつくかもしれませんね。
家でピアノの練習をしたいけれど、ご近所に音を響かせるのがためらわれる時や、早朝や夜間に練習したい時などに使用されるペダルです。
ペダルを踏み込むと、弦をたたくハンマーと弦の間にフェルトが挟まるので、音が小さく抑えられ、もこもこしたソフトな響きに変わります。
その性質上、ずっと踏みっぱなしにすることが多いペダルなので、ペダルを横にずらしたまま固定できるようになっているピアノも存在します。
踏みっぱなしで足が疲れることもなく、同時にダンパーペダルを使うこともできるので便利ですね。
ただ、いくら音を消しても消音ピアノや電子ピアノのようにはいきませんし、打鍵音などはそのままです。
音は小さいですがタッチは重くなってしまうので、普段からマフラーペダルを使っている人は強く鍵盤を押しがちになってしまい、繊細なタッチの練習ができないというデメリットもあります。
普段から夜や朝にピアノを練習する・・・という人は、マフラーペダルの使用よりも、消音ユニットの後付けや、電子ピアノや消音ピアノの利用を考えたほうがいいでしょう。
グランドピアノによっては、ハンドマフラーと言って、手で操作するレバーがついているものもあります。
その場合も、同じように音を小さくできます。
左のペダル:シフトペダル or ソフトペダル
最後に、1番左側にあるペダル、グランドピアノではシフトペダル、アップライトピアノではソフトペダルと呼ばれるペダルについてご説明します。
前の章で説明したソステヌートペダルとマフラーペダルは、名前だけでなく使いみちも全く異なっていましたが、今回のシフトペダルとソフトペダルの使い方は同じです。
ただし、音を出すときの構造が少し異なっているために、違う名前となっているのです。
シフトペダル/ソフトペダルの演奏記号
シフトペダルやソフトペダルを踏む時には「una corda」、離す時には「tre corde」と書かれています。
ウナコルダ、トレコルダ(トレコルデ)と読みます。
略す場合には、それぞれu.c.とt.c.と表記されます。
トレと言っているところで取ればいいので、分かりやすくていいですね!(違う?)
ちなみにイタリア語でトレとは3のことだそうです。
コルデとは弦のことで、ウーノは1を意味するそう。
それぞれ弦1本、弦3本ということですね。
実際に楽譜を見てみると、トレコルダがない場合もあります。
その場合は、最後までペダルを押しっぱなしということになります。
シフトペダル/ソフトペダルの効果
シフトペダルもソフトペダルも、踏んだ時には音を小さくする、柔らかくて丸い音にする、という働きをもっています。
しかし、音の出し方がグランドピアノとアップライトピアノとでは異なっています。
・グランドピアノの場合
ピアノは、3本の弦を下からハンマーがたたいて音を出しています。
シフトペダルを踏むと、ハンマー部分がごそっと全部右側へと移動(シフト)し、ハンマーがたたく弦が2本に減ります。
低音部では弦が1本や2本なのですが、その場合は弦の端を打つようになったり、1本のみ弦を打つようになったりします。
たたく弦の数が少なくなる、ハンマーがずれることで普段とは違う部分で弦を打つようになる、という2点から、普段とは違った小さくソフトな音が出るようになります。
・アップライトピアノの場合
こちらはソフトペダルと呼ばれます。
アップライトピアノは、その構造上、ハンマー部分を右側に移動させられません。
ソフトペダルを踏むと、ハンマー部分が持ち上がり、普段よりも弦に近い位置に移動します。
打つ弦の数は変わりませんが、打つときのハンマーの距離が短くなるので、それによって出る音を小さくしているんですね。
さて、前の章に出てきたマフラーペダルも音を小さくするものだったじゃないか、とここまで読んだ方は思われるかもしれません。
どちらも同じく音を小さくするものですが、マフラーペダルは練習用、ソフトペダルは演奏用のペダルとして使い分けます。
実際に比べてみると、マフラーペダルのほうがより小さく、くぐもった音がします。
ペダルの記号をあまり見かけない理由は?
ここまでピアノのペダルがもたらす音の変化と、その演奏記号についてお伝えしました。
しかし「ちょっと待って!そんな記号を見たことがないよ!?」という方もいらっしゃられるかもしれませんね。
実は、ペダルの記号は、場合によってはあまり見かけないこともあるんです。
以下に、その理由を3つご説明します。
理由1:初心者である
ピアノ初心者のうちは、残念ながらペダルは使用しません。
ですから当然、楽譜にもレッスンにもペダル記号は現れません。
まずは正しい指使いや力加減、表現方法を学んでからでないと、ペダルをうまく使えないからです。
手と一緒に足も動かすようになるので、ある程度弾けるようになってからでないと、足まで気を使えないという理由もあります。
初級者と中級者の境目がペダルの有無だとも言われています。
具体的にいうと、バイエルやブルグミュラー25の練習曲の中には、ペダルは出てきません。
つまり、順番にステップを踏んでピアノの練習をしていこうと考える人がペダルを踏むようになるまでは、結構な時間がかかるということです。
そんなに待ちきれない!という読者様は、バーナムピアノテクニックの1にはペダルが出てきますので、そちらで練習するのもいいかもしれません。
まだまだペダルの登場まで遠い!でも、ペダルは気になる!という時は、練習をする時に少しだけペダルを踏んでみるのはいかがでしょうか。
それぞれのペダルの音色の違いに耳を澄ませながら踏むと、ちょこっとだけ上級者気分を味わえます♪
気分転換にもいいですよ!
理由2:そもそも超レア!
ダンパーペダルの記号は見たことがあるけれど、その他のペダルを指定してくる楽譜を見たことがない、という人も多いと思われます。
大丈夫です、それはよくあることです。
ソステヌートペダルやシフトペダルは、そもそも楽譜に書かれていること自体がレアだからです!
特にソステヌートペダルの指示は超レアです。
ペダルそのものがついていないピアノがあることから分かるように、ソステヌートペダルはあまり一般的に使用するペダルとして認知されていません。
ですから、楽譜に書かれていることもめったに無いのです。
私も子供の頃に10年ほどピアノを習っていましたが、ソステヌートペダルの演奏記号が楽譜に書かれているのは見たことがありません。
シフトペダルも、演奏記号に見覚えはあるものの、踏んだ記憶はありません。
もちろん、私がピアノを大嫌いでまったく練習せず、全然上達しなかったから・・・というのもありますが(笑)
もしソステヌートペダルの記号に出会えたら、ピアノ超上級者だという証ですね♪
理由3:ペダル記号を書いていない楽譜もある
明らかに中級者以上向けの曲だし、踏んだ方がいいような気がするのにペダルについて一切楽譜に書かれていない・・・というときもあります。
それは、「原典に忠実な楽譜」もしくは「ポップスなどの楽譜」です。
クラシックピアノの楽譜には、原典に忠実なものと、弾きやすく表現などの解釈が加えられた校訂版があります。
原典版ですと、作曲家が書いたことしか楽譜に表示されていません。
ですから、バッハのように「ピアノ曲」を書いていない(※)場合などはもちろんペダル記号はありませんし、あまりペダル記号を書かない作曲家もいます。
ペダル以外に指番号なども書かれていないことが多いため、音大生や研究者向けの楽譜です。
この場合は、面倒ですが、可能であれば他の出版社から出ている同じ曲の楽譜を参照して、ペダルについてどう書かれているかを見ることが手っ取り早いです。
また、ポップスなどの楽譜は、演奏者が表現に合わせて自由にペダルを踏むので、いちいちペダル記号で指定していないことがほとんどです。
その場合は、自分の表現に合わせて、楽しくペダルをつけていきましょう♪
ペダルはそもそも、演奏者の表現をより深め、広げるためにあります。
「楽譜にこう書いてあるから・・・」ということにこだわらず、自分の好きに使っていきましょう♪
(※バッハの頃はチェンバロやオルガンが鍵盤楽器として主流でした。バッハ自身、ピアノが気に入らなかったようで、「ピアノ用の曲」は作曲していないのです!)
ピアノペダルの演奏記号と意味について
今回は、ピアノペダルの名前ともたらす音の変化、演奏記号についてご説明しました。
右側:ダンパーペダル(音を反響させ、響かせる)
中央:ソステヌートペダル(任意の音だけを響かせる。グランドピアノ)
もしくは、マフラーペダル(音を小さくする。アップライトピアノの練習時用)
左側:シフトペダル・ソフトペダル(音を小さく、ソフトにする)
また、以下の理由から、ペダルの演奏記号をあまり見かけないこともありました。
・初心者である
・ダンパーペダル以外の演奏記号はレア
・楽譜によってはペダル記号が書かれていない
初心者にはあまり馴染みがないけれども、とても気になるペダル。
演奏で活用できるようになって、表現力を高めちゃいましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
続きの記事はこちら>>【中級者への道】ピアノペダルの踏み方をマスターしよう!