時代を超え、今も世界中で愛されるモーツァルト。
クラシックピアノの学習者なら、モーツァルトを避けることはできません。
モーツァルトは、小学生から取り組まれる方も多いので、比較的簡単な印象をお持ちではありませんか?
実は、モーツァルトを美しく演奏することは、とても難しいのです。
この記事では、モーツァルトのピアノ曲の特徴や魅力、そして美しく演奏するためのポイントを解説します。
モーツァルトの生涯とピアノ
モーツァルト演奏の魅力と難しさ
モーツァルトをピアノで弾くときのポイント
モーツァルトのピアノ曲3選
ぜひ、最後までお読みください。
モーツァルトの生涯とピアノの特徴
音楽史上、最高の天才ともいわれるモーツァルト。
クラシック音楽にまったく興味がなくても、モーツァルトを知らない人はそういませんよね。
街中でもCMでも洗濯機からも、モーツァルトの音楽が流れてきます。
まず、モーツァルトの生涯について簡単に触れておきましょう。
モーツァルトの生涯
モーツァルトは、1756年にオーストリアのザルツブルクで生まれました。
幼少期から驚異的な音楽的才能を発揮し、3歳でピアノを演奏、5歳で作曲を始めています。
神童として王侯貴族からの注目を集め、ヨーロッパ各地で演奏旅行を行いました。
モーツァルトの人生には、華やかさだけでなく、複雑な人間関係や経済面での困窮など、苦しい時期もあったと伝えられています。
成功と苦難の中で、オペラやピアノ協奏曲、交響曲など数多くの傑作を生み出したのです。
しかし、健康上の問題や財政的な困難に苦しみ、わずか35歳の若さで亡くなりました。
短い人生の中で、後世に残る重要な遺産を残したのです。
モーツァルト時代のピアノの特徴
モーツァルトの生きた時代、現代のようなピアノは存在しませんでした。
当時のピアノは、より小さく、弦やハンマーの構造もシンプルです。
音の響きや力強さは今のピアノほどなく、音色も柔らかく繊細でした。
モーツァルトのピアノ曲を弾く際、いくつかの演奏スタイルがあります。
- 当時のピアノの音色で作曲したことから、強弱や音色の変化をあまり大げさにつけない演奏
- モーツァルトが現代のピアノで演奏するならと考えた、より多彩な音色でダイナミクスな演奏
いずれにしても、モーツァルトの音楽は、バランスと内面的な表現が重要です。
当時の美学を尊重したうえで、自分の解釈や感性を加えると、より魅力的な演奏となるでしょう。
モーツァルトのピアノ曲の魅力
モーツァルトのピアノ曲はとても人気がありますが、その魅力はどこにあるのでしょうか。
ピアノを弾く立場から考えてみました。
譜読みが比較的やさしい
モーツァルトの曲は、ロマン派以降のようにシャープやフラットだらけではなく、不協和音も少ないです。
譜読みについては、それほど難しくないと感じる方も多いのではないでしょうか。
譜読みの段階でつまずいて、モチベーションが下がってしまう曲も多い中、譜読みのしやすさは大きな魅力です。
洗練されたメロディーとハーモニー
シンプルで美しい旋律や、洗練されたハーモーニー。
モーツァルトの音楽には、人が心地よく感じられる普遍的(ふへんてき)な美しさがあります。
聴く側だけでなく、演奏者も美しさを堪能しながら弾けるのです。
弾いていて楽しい
全般的に音がきれいで明るいため、気持ちよく演奏できることも特徴です。
音楽の深さを考えすぎに、素直な気持ちで弾けますよね。
また、ピアノソナタには、オペラや交響曲の要素も感じられます。
歌のようなフレーズ、弦楽器や木管楽器のような音色……
キャラクターを想像しながら演奏できる楽しさがあります。
大人になってから、モーツァルトの魅力に、改めて気づいた方も多いかもしれませんね。
ピアノでモーツァルトを弾く難しさ
読者様の中にも、子供の頃にモーツァルトのソナタを演奏された方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ショパンなどのロマン派より先に学習することから、モーツァルトは簡単だと思っていませんか?
モーツァルトはもう弾けるから、早くショパンを弾きたいと思っていませんでしたか?
たしかに、譜読みがしやすく、手が大きくなくても弾けるという点で、モーツァルトは弾きやすいといえるかもしれません。
しかし、大人になって、改めてモーツァルトを演奏しようとすると、まったく弾けていないことに気が付きます。
モーツァルトが難しい理由は、次のようなことが考えられます。
・シンプルな曲ゆえに、粗が目立ってしまう。
・音の粒が揃っていないと、美しく聞えない。
・不協和音が少なく、ミスタッチが目立つ
・ペダルや表現力でごまかすことができない
モーツァルトを演奏することは、実はとても難しかったんですね。
ピアノでモーツァルトを演奏するときのポイント
モーツァルトの曲は、演奏する魅力に溢れています。
美しく演奏するためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
メロディを美しく奏でる
モーツァルトの音楽は、美しい旋律が特徴です。
ピアノ曲でも、オペラを思わせるようなフレーズを感じたことはありませんか?
メロディーを歌うように響かせることが重要です。
表現力を大切に弾く
洗練された旋律や完璧な構成の中にも、感情を感じさせるのがモーツァルトの音楽。
楽譜の中から何を感じますか?
どのように表現したいですか?
音楽のストーリーを感じて表現してみましょう。
ダイナミクスの変化
音の強弱の変化は、音楽に深みを与えます。
強弱をつけずに弾いてしまうと、面白味のない演奏になってしまいますよ。
音の強弱や音色の変化をつけて、演奏してみましょう。
巧みなテクニカル
モーツァルトを弾くには「真珠を一粒一粒連ねたネックレスのように」と、よくいわれます。
細かい装飾音を正確に弾く、音の粒を揃えるなどの基本的なテクニックが必要です。
曲がシンプルなだけに、音色については気を配らなくてはなりませんね。
自由な解釈
楽譜の指示に従いつつ、自分なりの感性で解釈することが大切です。
ロマン派以降に比べて、楽譜の指示が少ないため、音楽の理解と解釈が演奏者の個性になります。
楽譜通りに弾けただけで満足せずに、もう一歩進んでみましょう。
音楽の深さや面白さをみつけられますよ。
モーツァルトのピアノ曲3選
モーツァルトはピアノソナタを18曲、ピアノ協奏曲を27曲以上、その他にも幻想曲やロンドなど数多く作曲しています。
名曲揃いですが、今回はピアノソナタから3曲をご紹介いたします。
ピアノ・ソナタ 第16(15)番 ハ長調 K.545 1楽章
ソナチネアルバムに入っている曲で、読者様の中でも練習された方が多いのではないでしょうか。
モーツァルト自身が「初心者のための小さなソナタ」と記していることから、現在でもピアノ教材として広く親しまれていますね。
引用:YouTube
トルコ行進曲
あまりにも有名なこの曲は、ピアノソナタ第11番の第3楽章です。
替え歌になったり、スキャットで歌われたりと、さまざまジャンルで親しまれています。
ピアノの発表会でもおなじみですね。
引用:YouTube
ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.311
直前の母の死に影響されているともいわれていて、とても悲劇的な曲調です。
モーツァルトのピアノソナタ18曲中、短調は2曲だけ。
明るい曲調が多い中、悲痛さや絶望感が際立ちます。
天才モーツァルトの個人的な感情が感じられるともいわれています。
引用:YouTube
モーツァルトのピアノ曲について:まとめ
ここまで、モーツァルトのピアノ曲について、解説してきました。
改めて、まとめてみましょう。
- 1756年にオーストリアのザルツブルクで生まれ、35歳の若さで亡くなる
- 当時のピアノは、音の響きや力強さは今ほどでなく、音色も柔らかく繊細
- モーツァルトの曲は、シンプルがゆえに粗が目立ちやすい
- ピアノ曲は、譜読みがしやすく、美しい旋律で、楽しく演奏できる
- 美しく弾くには、技術の正確さだけでなく、表現力や音色にも気を配る必要がある
- ピアノソナタは、第16(15)番、第11番、第8番が有名
モーツァルトの音楽は、美しいだけでなく、人間の本質的な部分が垣間見えるといわれています。
モーツァルトを聴ける、またピアノで演奏できる喜びを改めて感じていただけたらうれしいです。
ピアノを弾くことは人生を豊かにしてくれます。
ゆっくりでも続けていくことで、その方の財産になります。
これからも、読者様のピアノライフを応援いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。